資金量が多くなくても手を出すことが出来、ほとんどの場合で利益が見込める……そんなリスクが少なくてリターンが大きいIPOは、当然多くの人が買いたいと思います。IPOの発行株数の方が申込株数より大きければ誰もが買えます。ですがほとんどの場合はこのようにはなりません。
そうすると、「買える人」を選ばなくてはなりません。この選び方にどんな方法があり、選ばれる確率を上げるにはどうしたら良いのでしょうか?
そういうことを知らないままやみくもに買いたいと願い、応募しても勝ち目はありません。相手が強敵であればあるほど、その特性を理解した上で臨まなければならないのですね!
今回はそういった視点で当選確率を上げるコツを書いていきたいと思います。
裁量配分と抽選配分
IPOにおける購入者の選定は、裁量配分と抽選配分とがあります。裁量配分とは、文字通り「裁量で購入者を決める」方法です。
店舗型の証券会社はネット証券会社と違って対面で営業をしたりしますが、担当者が普段から付き合いのあるお客にねぎらいの意味を込めて魅力的なIPO株を譲ったりします。これが裁量配分です。
IPOはただでさえ魅力的です。安く設定された価格で、殆どが値上がるというリスクの少ないものですから、ただでさえ「狭き門」です。
担当者が日頃の付き合いで「良くしてくれているお客」に感謝の気持ちも込めて譲るのです。「良くしてくれる」というのは担当者の裁量であって、何をすれば譲ってもらえるかという明確な条件や基準があるわけではありません。
ですが単なる会ったり話したりではなく、何かの商品を買ってくれたりするお客の方が当然譲ってもらえる可能性が高いのは普通に考えたら分かりますよね?!
サラリーマンの人が、日頃こうやって証券会社の人と会ったり話したりする暇がありますか?あって、そして商品を買ってあげたりする暇とお金がありますか?色々なセールス、勧誘に対応して良好な関係を築き続ける自信がありますか?
恐らくそれは「No」でしょう。だから『新規公開株(IPO)の買い方!申し込みから購入までの流れ』ではこの裁量について触れなかったのです(そもそも裁量は日ごろの付き合いが前提になるので「これが手順です」と明確に言えないのですね)。
IPOの現実
まず「主幹事」について説明しますね。
IPOによる企業の上場のための業務は複数の証券会社が行います。その複数の証券会社の中で、中心となって業務を取り仕切る証券会社を「主幹事」と言います。それ以外は平幹事と呼ばれます。
幹事となった証券会社は自分たちの持ち分に応じて購入者を決定しますが、中心的役割を担う主幹事が一番多くの持ち分を持っています。IPO毎に割合は変わりますが、主幹事は「新規上場株式全体の80%~90%」を持ち分として持っています。
だからIPO毎に主幹事がどこかを把握することはとても大事です。
主幹事がネット証券ならまだしも、上記店頭型だと「日頃のお付き合い」がないとまず譲ってもらえません。店頭型でも良い(日頃の付き合いがある)なら問題ないでしょう。担当の人と話して譲ってもらえば良いのですからね。ネット証券が主幹事になることもあるのでまずは主幹事がどこかを把握しておく必要があります。
主幹事は店頭型証券会社がなることが多く、このような事情からIPOに挑戦してみようと思っている初心者の人が平幹事の証券会社から申し込んだ場合、一般論ですが、当選確率は小型IPOで0.1~0.5%程度、大型IPOで5~10%程度です。
当選確率を上げるコツ
狭き門ではありますが、きちんと工夫すれば小型IPOで5~10%、大型IPOで50%程度まで当選確率を引き上げることが可能です。
その工夫・方法は以下の通りです。
・ネット証券で申し込む
時間的・資金的な面だけでなく人間関係構築という面でもコストパフォーマンスに劣る裁量配分は最初から捨てることです。
上手い付き合いがあればそれだけで譲ってもらえるでしょうが、その「上手い付き合いを通して良好な関係になる」こと自体が難しいし、手間です。
店頭型の証券会社が主幹事になっている場合は主幹事の取り分をまるまる他の人に譲ることになりますが、こういったことを考えるとある意味仕方がないことです。勿論、店頭型の証券会社が一切抽選を行わないというわけではありませんが、抽選を行うといっても全体の10~15%に過ぎません。
これからIPOをという人ははじめから店頭型は切った方が良いですしネット証券会社を選ぶのが現実的な選択だと思います。
・完全平等抽選を選ぶ
そこでネット証券会社での抽選に申し込むことになるのですが、この際、抽選で「完全平等抽選」かどうかを注視しましょう。
完全平等抽選とは、「1人1票」を前提にして抽選する方式です。
多くのお金を持っている人(多くのお金を投じて申し込むことが出来る人)が優遇されるのではなく、資金量に関係なく完全に平等に抽選されます。100株購入希望の人も1000株購入希望の人も「応募した1人」としてカウントされ、抽選の際は資金量に関係なく完全にランダムに抽出します。
これに対して完全抽選は、裁量で決めるわけではないにしても、「お金を多く持っている人ほど当選確率が高い」ので資金量がものをいうことになります。
・なるべく多くのネット証券会社の口座を保有する
『おすすめネット証券会社比較 ~取引の時間・種類、資金で見てみよう!』で示した表を再掲します。
|
取扱数 |
口座数 |
抽選方法 |
総合評価 |
60社以上 |
300万以上 |
70%:完全抽選(資金) 店頭配分あり |
○ |
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30社以上 |
90万以上 |
100%:完全平等抽選 |
◎ |
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10社以下 |
140万以上 |
100%:完全抽選(資金) |
△ |
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10社以上 |
90万以上 |
100%:完全平等抽選 |
○ |
この記事では「IPOならマネックス証券」と書きました。取扱数と口座数のバランスがとても良く、裁量抽選を一切行わない、それでいて「完全平等抽選」だからです。
これは、「資金力に余裕がない」場合や主幹事・平幹事として「マネックス証券しかない」場合はまさにそうなのですが、主幹事・平幹事として複数の証券会社がある場合は、宝くじだって多く買っていた方が良いのと同じく、資金量に余裕があるのならマネックス証券とカブドットコム証券・SBI証券でという組み合わせの方がその分当選確率は上がります。
ご自身が複数の証券口座を開設するのは勿論ですが、ご家族に開設してもらっても良いでしょう。ただし、この場合はその人の了承を必ず得て下さい。そうしないとトラブルの元になります。
また、未成年者も親権者が口座を保有していれば口座を開設することが出来ます(『未成年・無職・学生でも証券口座開設はできる?』を参照して下さいね。未成年口座でもIPOが出来る証券会社はちゃんとあります)。
・SBI証券のIPOチャレンジポイントを有効活用する
IPOチャレンジポイントはSBI証券独自の仕組みで、IPOを申し込んで落選するとこのポイントが貯まります。
そして、次回IPO申込時にこのポイントを1ポイント単位で使うことが出来ます。SBI証券では全体の30%はこのポイント数の多い人から順番に抽選されます。
「無駄死にはしない」ということですね。
ただ、この30%分はポイントが多い順に決まります。みんながみんなSBI証券で申し込むと結局「資金量次第」になります。ただでさえSBI証券は口座数が多いので……。
ですが他の証券会社が幹事になっておらず、SBI証券からでしか申し込めない場合は仮に落選しても有効活用出来る道があることを頭に入れておいて下さい。
まとめ
いかがでしたか?
「なんだ、そんなことか……」と、ひょっとしたら落胆させたかも知れません。
でも現実問題として主幹事が圧倒的な持ち分を持ち、残った平幹事が持つ抽選配分を勝ち取るには、結局資金量にものを言わせるか沢山の申し込みをするしかないのですね。ネット証券会社が主幹事をしている場合は理想的ですが、そうであってもなくても抽選配分の中で勝ち取るしかないのです。
一回の申し込みで多くのお金を投じて応募するか、複数の証券会社でそれぞれ応募して申し込み数を増やすか、その両方を組み合わせるか、現実的にはこれしかないのです。
ですが、ただでさえ狭き門であるIPOに申し込む人達は、こういうこともやっていない場合が多いのです。単純なことですが、あなたが1つより2つの証券会社から申し込めば当選確率は純粋に2倍になります。ご家族に申し込んでもらえばその分だけ当選確率は上がります。
考えてみれば当たり前過ぎるからこそ落胆されることもあるでしょうが、実際こういうことを通して当選確率を上げるのが常道であって、少なくともIPOの実情を知るだけでも戦略を立てられます。
この記事は2015年12月のものですが、最近有名なIPOは日本郵政でしたね?!私の知り合いは、実際このようなやり方で当選しました。
このような実情を知ることによって「相手を知り」、単純ですが効果があるこの方法を使うことによってあなたもIPOを手にして利益を上げられることを願っています。