『メリットだらけじゃない!NISA(ニーサ)のデメリットについて』ではNISA口座を開設し、運用していく上でのデメリットを紹介しました。
国が徴税機会を減らすことのデメリットと引き換えに何を目指しているのかを見て来ましたが、「NISA口座は複数の金融機関で作れるか?」という問いにも、この「国が負担する不利益」を考えればおのずと答えが出て来ます。
それでは早速見ていくことにしましょう!
Q:「1人1口座ですか?」
A:「はい、そうです」
「おのずと答えが出て来る」と書いておきながらその答えが最後にならないと分からないのはおかしいですよね?!だからすぐさま答えを出しました。「良く考えてみて下さい」と前置きしなくてもすぐに分かることです。
NISAが「少額投資非課税制度」である以上、NISA口座での運用における利益は「全てが非課税」です。
投信を購入してどれだけ大きな利益を得ても、株式投資をしてどれだけ大きな利益を得ても、利益の額に関係なく「非課税」です。
それは本来なら税金として徴収出来る国にとっては大きな痛手です。だからこそ『メリットだらけじゃない!NISA(ニーサ)のデメリットについて』で紹介して来たような「NISA口座を持つ人のデメリット」があるわけです。
もし、NISA口座を複数持てたらどうなりますか?
NISA口座を持っている人はそのデメリットを減らすために複数の口座を開設するでしょう。どれだけ口座を開設しようとも「100万円が上限」・「損益通算や繰越控除は出来ない」などのデメリットはあるでしょう。でも上限を超えない範囲でより多くの商品を購入するために複数開設するのは想像出来ますよね?
「この口座では既に100万円を目一杯使った。他の口座はまだ使ってないからそっちで購入しよう」ということになるわけです。
お気付きでしょうか?これって、デメリットのひとつである「非課税枠は使い回せない」を実質無意味にさせているのです!
あるNISA口座で30万円使いました。売却しても残り70万円です。80万円の商品を購入したい時、もしも複数の口座が持てるのだとしたら、別のNISA口座で購入すれば良いのです。
NISA口座は銀行でも開設出来ます。本来であればNISA口座はひとつしか持てないので銀行で口座開設をしたらNISAでの株式投資は出来ませんよね?銀行では株式は購入出来ないのですから……。
でも複数持てるのなら、「こっちは投信用、こっちは株式投資用」という使い方が出来てしまうのです。
購入出来る金額の上限があるにしても、それを超えない限りは「複数の商品を購入出来てしまう」のです。
NISA口座を複数開設出来るということは、実質的に「NISAのデメリットさえも打ち消す」ことを意味し、NISAの存在意義を根底から否定することに繋がるのです。
そんなこと許せる?
非課税にすることはとても大きく、でもそれ以上のメリットが国にあるからこそNISAはあるわけです。
でも制限を掛けなければ国にとっては一方的に損になるからこそ上手い具合に制限を設けて釣り合いを持たせているのですね。
もし複数の口座を持てるようにしたら、非課税となる対象が膨れ上がります。
ひょっとしたら、「2口座までなら開設可能」となるかも知れません。でも最初からそれを許していたらどうなるか分からないですよね?NISAはまだ始まったばかりですから。
だから社会実験を兼ねて、今後の動向を見て変わっていくのかも知れません。実際、現時点(2015年12月)で「2016年から上限が100万円から120万円になる」ことは決まっています。このように制限が緩くなることも踏まえ、これから変わっていくこともあるでしょう。
ですが少なくとも今は「複数開設することは出来ない」のです。
でも少しだけなら理解してあげる!
そうはいっても、「口座は開設したけど、後になって気付くことも沢山あって後悔してる」という声もあるでしょう。
それが原因でNISAの目的である「預金から投資へのシフト」・「企業への資金供給拡大」・「経済成長」が影をひそめるなら本末転倒です。
だからNISAには「NISA口座を別の金融機関に変更する」ことも出来るようにしてあるのです。
NISAは2023年まで実施されます。色々な制限があるのに、「一度でも口座を開設したら二度と変更出来ない」ならたまったものではありませんよね?
当サイトでも、NISA口座を変更する方法について『NISA口座を別の金融機関に変更する方法』で解説しています。
まとめ
あなたが「上限100万円っていうのは少ないな~」と思ったとしても、それをNISA口座開設条件である「20歳以上の住民票が提出出来る個人」全てに展開することは国にとってはとてつもなく大きいことなのです。
それ以上のメリットがあるからやっているとしても、そこに「制限」を掛けないと制度破綻してしまいます。
そう考えると「一人一口座」というのは必然なのかも知れませんね。NISA口座は変更出来るとしてもややこしいです。換えなくて済むように慎重に検討して下さいね。