投資の一形態である信用取引。あなたは、今、もしくはゆくゆくは信用取引もしてみたいと思っているかも知れません。
信用取引を行うには、既に口座開設をしていても別の審査が必要となります。
今からにせよ将来的にせよ、信用取引がどういうものかを簡単ながら解説し、その特殊性を通して審査が別に必要となることを理解して頂いて、実際の審査基準について解説したいと思います。
知って損することはありません。学んで損することはありません。どんな知識も、いつかは役に立ちます。役に立ちそうもない知識さえも会話のネタにはなるでしょう。
そういう意味で、株式投資に興味を抱いているあなたにとって信用取引の知識は決して無駄にはなりません。あなたが頭に入れても損はないように、以下解説していきたいと思います。
信用取引って何?
信用取引は簡潔にひとことで言えば「自分を信用してもらって自分が持っている資金以上に株式投資を行うこと」です。まさに「信用」取引ですね!
自分の資金や株式などを担保にして証券会社からお金を借りて投資します。
メリットは3つあります。
ひとつは「持っているお金以上の取引が出来る」ということです。
あなたが100万円持っているなら、普通の株式投資(現物取引)は100万までしか取引出来ません。
ですがこの状況で信用取引をすれば、最大で3倍の300万円分の取引が可能となります。これはレバレッジ効果と呼ばれ、レバレッジとは「てこの原理」と同じです。当然利益は3倍になります(損失も同じです)。
もうひとつは「株価下落時にも利益を出せる」ということです。
現物取引は「買って売る」ものですが、これは安く買って高く売ると利益が出ますよね?空売りは全く逆で、高い所で売って安いところで買い戻すのです。株価が下がれば儲かるわけです。
これを空売りと呼ぶのは、株を買ってそれを決済する時も「売り」ですから、決済としての売りと分けるためです。保有している株を決済として売るのではなく、何もない状態で売るから「空売り」と呼ぶのですね。
空売りをする時は証券会社から株を借りることになります。そしてその株を売ることで空売りが出来ます。株価が下がったところで買い戻し、その株を証券会社に返します。
売った時と買い戻した時の差が損益となります。
現物取引なら、1000円で買って1100円で売れば100円の利益、900円で売れば100円の損失ですよね?
空売りはこれが逆になり、1000円で売って900円で買い戻せば100円の利益、1100円で買い戻せば100円の損失となります。
最後は「株主優待をお得に手に入れられる」ことです。現物取引の買い注文と信用取引の売り注文(空売り)を組み合わせることで株の売買手数料と信用取引の金利だけでお得に株主優待を手に入れられます。
買い注文と売り注文が両方入っているので、株価変動は意味がなくなります。
1000円で買ったものと1000円で売ったものを両方持っていれば、片方の利益がもう片方の損失、片方の損失がもう片方の利益になるので互いに相殺するのですね。同じ値段でなくて開きがある場合でも、その開き分だけです。先物取引などで良く使われる「両建て」と同じです。
買いと売りを入れれば手数料分しかかからず、保有し続けている間はいつまで経っても損益は変わらないのでその間はずっと株主優待を手に入れることが出来るのですね。
信用取引のルールと信用取引自体の難しさ
・6ヶ月以内に清算しなければいけません
借りているのですから返済しないといけません。6ヶ月以内に返すことが原則です。
最近は無期限信用取引(一般信用取引)という返済期限なしの信用取引もありますが、借りている以上、毎日金利が発生します。
・追証が発生することがあります
追証は「おいしょう」と読みます。これは「追加で保証金(担保)が必要になること」です。
借りたお金は、保有している資金や株券を担保に出来ている間は良いですがそれ以上に損失が出た場合は追証が発生し、これに応じられない時は証券会社が自動的に注文を出して決済します。証券会社としては貸している額をきちんと回収したい、もしその見込みがない時は自分を守るために信用取引で売買している銘柄を強制的に決済するのです。
信用取引はレバレッジ効果を利用して多くのお金を回して取引が出来ます。大きなお金で買うことも売ることも出来ます。空売りも出来ます。
しかし便利なものはやはりリスクが付き物です。証券会社からすればお金を貸しているわけですから、「右も左も分からない人」に貸すわけがありません。
理屈だけ知っていても、「右も左も分からない」わけではありませんが「一応知識だけはあるんだね、じゃあやってみて」と簡単に貸してくれるわけもありません。
こういったことが、普通の取引(現物取引)とは違うところです。だから現物取引とは違って所定の審査があるのです(そしてこの信用取引の特徴ゆえに、未成年者は未成年口座や親権者の同意があっても信用取引は出来ないのです。このことは『未成年・無職・学生でも証券口座開設はできる?』でも紹介させて頂きました)。
信用取引をするための審査の実際
信用取引は、早い話が知識と経験がなければ出来ないということになります。
審査が通ってはじめて信用取引が出来るようになるのに、信用取引の経験なんてあるわけないですよね?ではこの経験とは何かというと、「その他の取引の経験」なのです。
そういった経験を通して知識だけでなく株の売買やリスク管理が出来るという推定をした上で審査するのですね。実際の審査はWeb上での簡単な手続きで済む場合がほとんどです。ログインして信用取引口座開設の申し込みをします。
審査はアンケートに答えるような形式で質問に答えれば良い方式になっています。実際に特定の取引をしてもらうとか知識を問う試験があるとかはありません。
このサイトで紹介したネット証券会社で言えば以下の通りとなります。
・SBI証券
- 十分な金融資産と十分な証券知識、株式の投資経験があり、常時連絡が取れること。
- 80歳未満であること(上限が決められています)。
・マネックス証券
- (他の証券会社などでの)信用取引の経験、または1年以上の株式投資の経験があり、かつ、信用取引に関する知識があって自分でインターネットを利用出来る環境にあること。
- 常に電話・メールで連絡が取れる状況であること。
- 氏名、住所、電話番号、生年月日、職業(勤務先を含む)、電子メールアドレス等が正しく登録されていること。
関連記事:ツールが使いやすい!マネックス証券のメリットとデメリット
・楽天証券
- 100万円以上の金融資産があり、(他の証券会社などでの)信用取引の経験、または現物取引の経験が6カ月以上あってインターネットを利用出来る環境にあること。
- 自身のメールアドレスがきちんと登録されてあり、常に電話連絡を取れる状況にあること。
関連記事:マーケットスピードが便利!楽天証券のメリットとデメリットまとめ
・カブドットコム証券
- 300万円以上の金融資産があり、(他の証券会社などでの)信用取引の経験、または1年以上の株あるいはFXの経験かつ十分な信用取引の知識があること。
- インターネットが使えて、常時連絡がとれること。
- メールアドレスを持っていて、信用取引におけるリスクを理解し、資金性格・投資期間・投資目的にあった取引をすること。
いずれもその資金について何らかの証明をしないといけないというわけではありません。どれくらいありますかという質問にプルダウンメニューから選ぶくらいのものです。しかし100万円~300万円は選んでおかないと実際にあるかないかは別で審査通過は難しくなります。
やはり経験を問われます。同じく選択式です。連絡が付くかどうかを基準にしているのはやはり追証発生時などに対応するためです。
まとめ
信用取引はWeb審査で完結して、その審査基準も上記の通りであり、特別難しいものではありません。
未成年であればその時点でダメですが、普通に現物取引を半年~1年していれば「経験がある」としてくれます。
ぶっちゃけた話、こういった条件に合うような選択をすれば審査が通る場合があります。
ですが、例えば現物取引は他のレバレッジが効く商品(日経225先物やFXなど)の審査基準となりますから、ある程度はその証券会社で実際に現物投資をした方が得策です。その経験さえあれば、現物投資を実際にしていない証券会社でも経験があるという形で堂々と申請出来ますしね。
投資は今まで一切したことがないという人がいきなり信用取引をするなんてないと思います。普通に現物取引から始めるでしょうし、それを一定の期間続ければ良いだけのことです。
最後に、審査に通ること(それによって信用取引が出来ること)と実際の信用取引は別物です。冒頭で述べた通り、信用取引はハイリスクハイリターンでもあります。きちんとした知識と投資一般の経験がない限り、しない方が良いです。
もしあなたが信用取引口座を開設しようとお考えなら、十分お気を付け下さいね!