巷間何かと話題になっているマイナンバー制度。どういう制度で、国がどのように関与し、日常生活にどう影響するのか、全体像だけでなく個々の場面でこのマイナンバー制度の実際が議論されています。
そこで今回は、そもそもマイナンバーとは何かを簡単に説明するところからはじめて、証券口座を開設する時に通知が必要となったこのマイナンバー制度の実際の扱いについて書いていきます。
そもそもマイナンバー制度って?
マイナンバー制度は、国民一人ひとりに番号を割り振り、社会保障や納税に関する情報を一元的に管理する「共通番号(マイナンバー)制度」を導入するため制度で、法律としては2013年に成立しました。また2015年には、マイナンバー改正法が成立しました。
この法改正により、銀行がマイナンバーの提供を受けることが出来るようになりました。ここから「お金の動きを監視されるのではないか?」という議論が起き、銀行や証券会社で取引を行う際、どのような手続きが必要になるのかという実務上の問題が出て来るのです。
証券口座ではマイナンバーが必要となります
2016年1月1日よりマイナンバーの利用が始まります。この時点では「税・社会保障・災害対策」のみに使用されます。
2015年の法改正で、2018年から預金口座への適用、特定検診(メタボ検診など)の結果や予防接種の履歴管理にもマイナンバーが活用出来るようになりました。
預貯金口座にマイナンバーを付番するのは、
- ペイオフのための預貯金額の合算においてマイナンバーの利用を可能とする
- 金融機関に対する社会保障制度における資力調査や税務調査でマイナンバーが付された預金情報を効率的に利用出来るようにする
ためです。
「可能にするために」、「利用出来るようにするために」ということで、2018年時点では銀行口座開設時のマイナンバー記入は任意です。マイナンバーを記入しなくてもそれ自体は問題ありません。現時点では強制力はありません。
任意であれ銀行にマイナンバーが登録されるなら、証券口座はどうでしょうか?証券会社に対しては2015年の法改正によって何か変わったという部分はありません。
「ということは、証券口座はマイナンバーと関係ないのね?!」とついつい思ってしまいますが、証券口座に対するマイナンバー付与は2016年1月より始まります。
これは、証券会社が特定口座の税金計算・納付・各種支払調書の交付を税務署に行っていることが理由となっています(特定口座については『一般口座と特定口座の違いってなに?それぞれのメリット』で述べていますので参考にして下さいね)。この税金部分が「税・社会保障・災害対策」の税に該当するということなのですね。
各証券会社の実際
殆どの証券が、以下のような対応となっています。
- 既に口座を持っている場合
2018年末までにマイナンバーを通知
- 口座を開設する場合
2015年中に開設し、2018年末までにマイナンバーを通知
2016年1月以降の開設は口座開設時にマイナンバーを通知
ただし、全ての商品がというわけではありません。
一例ですが、楽天証券の場合は「商品先物、TS口座/MT4口座(FX)については、詳細が決まり次第ご連絡いたします」とあります。
ですが「通知は必要だがその時期が未定」と考えた方が良く、ただ単純に(通知の時期についての)詳細が決まっていないから待って欲しいと考える方が賢明です。
2015年末までに開設した口座について2018年末まで猶予があるのは、証券会社がマイナンバーを記載して税務署へ提出する書類に3年間の猶予規定が設けられているからです。
既存口座にせよこれから開設するにせよ、マイナンバー通知時期については証券会社によって対応が若干違う場合もあるのでホームページを確認しておきましょう。
まとめ
ひょっとしたら国が預金自体に税金をかけるのではないかとか色々と言われていますが、少なくとも個々の取引についてはマイナンバー通知はむしろ有難いものだと思います。
取引をするお金があれば(購入する資金、証拠金など)、投資は何も特別な人だけに許されたものでは決してありません。しかし、意図的な脱税なら論外ですが、中には申告をしなかったという人もいるのですね。
例えば一瞬で巨万の富を得られるFX。申告分離課税ですから自ら申告しないといけません。FXの申告はそれほど難しくないのですが、申告する必要があるということを知らない人もいます。短期間で巨万の富を得るということは当然税金も高くなります。それを怠ったがために本当に大変な生活を送るはめになったという人もいます。
申告しなかったとしても、そもそも課税対象なのですから意図的に脱税をと考えている場合を除いてどう考えたって申告した方が良いのです(そして実際に申告しないといけません)。
『申告分離課税が適用になる上場株式等の譲渡益課税について、証券会社が損益の計算を行い、「特定口座年間取引報告書」を交付する制度』である特定口座は証券会社が納税してくれます。
特定口座はマイナンバー制度以前からありますから本来ならマイナンバーを通知しなくても「納税自体は出来ます(し、今まで出来ていました)」。今回のマイナンバー通知は証券会社の事務処理の問題です。
ですが納税の意識を高めるという意味では、このマイナンバー通知は資するところがあると思います。
あなたもこれから証券口座を開設する時は、マイナンバーの通知を忘れないで下さいね!そうしないと口座自体開設出来なくて取引が出来ません。